唖然たる思い
絶対絵画「私はラズモフ氏である」
― 唖然たる思い ―
一九八九年 冬
繞々乎 第28号
目 次
「野蛮・冬の砂糖」 草森 恒四郎
マリボルの譫妄 毛利 章
「野蛮・冬の砂糖」
コップの中には、それぞれ異なる高さまで
水が入っていた。
フィヨルドの底に、沈鐘があらわれて来た。
何も質問はしなかった。失くしたつり針のこ
とも。
「並木道ホーフイェーガーアレーは、そう
いう名まえでどんなにたくさんの約束をして
くれながら、約束を守ることはほとんどない
のだった」
照明が暗がりを克服したわけではなかった。
長時間露出によって暗がりからもがき出て来
るものは、すぐ曇天の午後に行方知れずにな
っていった。
時間をかけて降り積もった埃の上に、足音を
しのばせる見知らぬ人が、形跡だけでなく、
ルビーさえも部屋に遺し去った。
廃墟は、悲しんでいない。はしゃいでいる
のでもないが。、ざわめきの亜種。そこに立つ
と、ぼくが誰であるか、認識されたと感じる。
頑固に名づけがたい唖の物質がそこにはあ
った。遠方と夜がであうところ、原初の悪が
ある。誰のためにあるのだろうと思うような
地球外的・有史以前の直線性を、ぼくは礼拝した。
ぼくが質問をしに行く場所があった。打ち
棄てられた赤レンガの大きな炉がむき出しに
なっていて、2本のボルトが、異なる高さで
空気に触れてつき出ていた。耐火レンガの大
きな炉とボルトの上に陰暦の雪が降る日には、
その場所は、青粘土の露頭している場所や猿
桃のなる場所、魚のいる場所のように励起され
た、予言の能力を有つ、他の暦の、他の土地
であって、ぼくは「野蛮・冬の砂糖」につい
て質問するのだった。
「エイドーラが人に近づいて来る。それは
人によって姿を見られ、声を聞かれることに
よって、彼に将来を予示する」
ぼくは、ぼくの消滅した2040年の家が
どんなだろうと、木箱の中に隠れていた。ぼ
くは、カーテンの蔭に隠れてカーテンを模写
して身体を励起させるように、鏡が誰もいな
い部屋を呑みこんでいるように、2040年
を模写しきった。
この生体実験は、後遺症となった。
何もしていないのに、誰かに(もしかする
と孫次郎に)追われていると感じ、出自と系
譜の合図のほかに、ぼくは世からいなくなれ
る、という異様な配列を知った。
のぞきあなは、賭博者を麻痺させる流出の
瞬間(目)のように、部屋全体に見られると
いう魅惑だった。
「ふしぎに思ったのは、女が入浴しながら
ミカンやニギリメシを食べることだ。何回も
見た。」
(未分類の剥離像が人に降りかかる)
遠方と夜が出会い、身をまかせるようにと
うながしかける犯行現場に(何事かが終って
誰もが見過ごしたセピア色の予言の能力が
壜詰標本のように威力を太らせている場所
に)「野蛮・冬の砂糖」と感じられる雑多なも
の、貿易の痕跡を陳列したショーウインドー
の照明に照らしだされた顔面は、大きな迂
回をする白色雑音となって通りかかった。
フィヨルドの底に、沈鐘があらわれて来た。
何も質問はしなかった。失くしたつり針のこ
とも。
コップの中には、それぞれ異なる高さまで
水が入っていた。
ぼくはなんども見に行った。何の変化もな
いのに、とりかえられてしまっている。
部屋には言ばを話す力が潜む。それはお
しゃべりではない。身体を励起する固有名の
意味の襲明なのだ。
2月26日の陰毛を有つ被造物は、上にな
って交合っていた。藻掻き出て来た柔らかな
象形に、部屋も彎曲し、誰かが話す。
名づけられるのを待って、だがそうならな
い象形は多い。
テレビはぼくの顔面のようにずっと白色雑
音だった。
(仮死状態の女を横にして陰部を見ること
の何とも言えぬ愉悦について供述する小平
義雄は、南京の無重力の地で日本兵が数
知れぬ中国人を斬首するのを同時になぞ
っていた)
超絶技巧練習曲「アナクシマ」止
絶対絵画「私はラズモフ氏である」
― 唖然たる思い ―
(絶には確かに唖という物質が流れている)
一九八九年 冬
繞々乎 第28号
目 次
「野蛮・冬の砂糖」 草森 恒四郎
マリボルの譫妄 毛利 章
「野蛮・冬の砂糖」
コップの中には、それぞれ異なる高さまで水が入っていた。
【こういうことはよくあり、何となく夢中には意味ありそうだが、
フィヨルドの底に、沈鐘があらわれて来た。
【Debussyの「沈める寺」と、例えば、
「並木道ホーフイェーガーアレーは、
【Hope Aegar Alley マラソンの円谷のことか、瀬古のズルネズミに嫌気がさして】
照明が暗がりを克服したわけではなかった。
【人工的な営為は、
時間をかけて降り積もった埃の上に、
【悲しむように記憶は、それ自体残り、その記憶は、
廃墟は、悲しんでいない。はしゃいでいるのでもないが。、
【廃墟は「ぼくが誰であるか」ということ自体を、押し出す自然(
頑固に名づけがたい唖の物質がそこにはあった。
【ぼくたちが魅かれるもとには、鬼がいて未だみぬもの、
ぼくが質問をしに行く場所があった。
【質問をしにに行く場所。レンガの炉は「火宅無常」が崩れ、
【自閉症の生徒。女の子から「わらってがらん」とか「・・・
「エイドーラが人に近づいて来る。それは人によって姿を見られ、
【エルドラードという薬物のようなものか。ひとびとを襲う○○
ぼくは、ぼくの消滅した2040年の家がどんなだろうと、
【幼児がカーテンに隠れ、
この生体実験は、後遺症となった。 何もしていないのに、誰かに(もしかすると孫次郎に)
【異様な配列があるのは、純粋ではなく、自殺、
のぞきあなは、賭博者を麻痺させる流出の瞬間(目)のように、
【覗き穴、主と客、対と象と、その主体。
「ふしぎに思ったのは、
【元の文の主語による受身形は、行為の主を曖昧に、
(未分類の剥離像が人に降りかかる)
【
遠方と夜が出会い、
【柔らかいもち肌のような善的存在(赤ん坊)が悪を感じる、
フィヨルドの底に、沈鐘があらわれて来た。
コップの中には、それぞれ異なる高さまで水が入っていた。 ぼくはなんども見に行った。何の変化もないのに、
【だるまさんころんだのふしぎ。とりかえる、つまり、
部屋には言ばを話す力が潜む。それはおしゃべりではない。
2月26日の陰毛を有つ被造物は、上になって交合っていた。
【母は固有名とはなりえない。
名づけられるのを待って、だがそうならない象形は多い。
テレビはぼくの顔面のようにずっと白色雑音だった。
(
【はっとするような意味ではないかも知れないが、手淫には、


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