碧痕9 秘め事
9 秘め事
秘め事を織り込める鶴女房は、覗くように誘惑する、その覗き返しを以てその窃視の瞬間へ誘惑されているのであり、雪女の如く、秘め事を分かち合うこととして、毒を盛るのである。つまり、この秘め事は極端に私的で、その白い羽、白い息に一般化が追いつかないのであるが、それは、感染して保存されるのである。
吉野山の桜に出くわすのは、白い息を吐く丹頂鶴や、遠い轟が忽如として瀑布となってたぎり落ちる長目に匹敵する。程度としての物凄さではなく、隠れていたものが顕れる効果というよりも、この世ならぬものの忽然とした出現で、それは場所を占める出来事ではなく、重量も距離も実相も失調しているが、津々浦々に咲き継がれる桜は、吉野山の桜を移そうとする限りで、その世俗化は、吉野山の桜を自生する(かの如く)歴史的にし、範疇が追いつかない失調の密かな目じるしとなるようなモニュメントでもあって、まがいものとしてのその歴史的負の到達・保存というだけでなく、跡形もないその失調の沈黙の応答が、通奏低音的に大仏の気配のように遍在してもいる。そのようにして、桜はつづく。
秘め事を織り込める鶴女房は、覗くように誘惑する、その覗き返しを以てその窃視の瞬間へ誘惑されているのであり、雪女の如く、秘め事を分かち合うこととして、毒を盛るのである。つまり、この秘め事は極端に私的で、その白い羽、白い息に一般化が追いつかないのであるが、それは、感染して保存されるのである。
吉野山の桜に出くわすのは、白い息を吐く丹頂鶴や、遠い轟が忽如として瀑布となってたぎり落ちる長目に匹敵する。程度としての物凄さではなく、隠れていたものが顕れる効果というよりも、この世ならぬものの忽然とした出現で、それは場所を占める出来事ではなく、重量も距離も実相も失調しているが、津々浦々に咲き継がれる桜は、吉野山の桜を移そうとする限りで、その世俗化は、吉野山の桜を自生する(かの如く)歴史的にし、範疇が追いつかない失調の密かな目じるしとなるようなモニュメントでもあって、まがいものとしてのその歴史的負の到達・保存というだけでなく、跡形もないその失調の沈黙の応答が、通奏低音的に大仏の気配のように遍在してもいる。そのようにして、桜はつづく。


0 Comments:
Post a Comment
<< Home