碧痕53 眩暈、卒倒、大あくび
53 眩暈、卒倒、大あくび
ウフィッツィ美術館に隣接するパラッツォ・ヴェッキオの「五百人の間」で記者会見がひらかれていたとき、磯崎新は、ヴァザーリの通俗的な大壁画の裏にはダ・ヴィンチとミケランジェロの消えてしまった競作があったはずだ、と思った瞬間、眩暈に襲われ卒倒する。
かつてスタンダールも、サンタ・クローチェ寺院で倒れた。それは、マキャヴェリやミケランジェロがここで眠っていると考えた瞬間だった。今でもプランカッチ礼拝堂やウフィッツィ美術館で、卒倒する人がいて、精神病理学はこれを、スタンダール症候群と呼称し、自らの「文化的根源」をのぞいてしまった、その衝撃に触れる。
内臓や大地、媒体性のように常はその気配を消してそれと知らず使いこなされているが剥き出しになると薄気味悪く脅かしかけるものとしての「文化的根源」に面して、先ず眩暈を以て模写発作が起こり、続いて卒倒を以て別の模写発作が起こったのである。一つは、裂目の覚醒に面しての発作、もう一つは、裂目の眠り込みに面しての発作であり、時として、この二つの模写発作の複合として、大あくびが起こる。
ウフィッツィ美術館に隣接するパラッツォ・ヴェッキオの「五百人の間」で記者会見がひらかれていたとき、磯崎新は、ヴァザーリの通俗的な大壁画の裏にはダ・ヴィンチとミケランジェロの消えてしまった競作があったはずだ、と思った瞬間、眩暈に襲われ卒倒する。
かつてスタンダールも、サンタ・クローチェ寺院で倒れた。それは、マキャヴェリやミケランジェロがここで眠っていると考えた瞬間だった。今でもプランカッチ礼拝堂やウフィッツィ美術館で、卒倒する人がいて、精神病理学はこれを、スタンダール症候群と呼称し、自らの「文化的根源」をのぞいてしまった、その衝撃に触れる。
内臓や大地、媒体性のように常はその気配を消してそれと知らず使いこなされているが剥き出しになると薄気味悪く脅かしかけるものとしての「文化的根源」に面して、先ず眩暈を以て模写発作が起こり、続いて卒倒を以て別の模写発作が起こったのである。一つは、裂目の覚醒に面しての発作、もう一つは、裂目の眠り込みに面しての発作であり、時として、この二つの模写発作の複合として、大あくびが起こる。


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