Monday, August 08, 2011

碧痕94 「ポーランド人の国」の方解

94 「ポーランド人の国」の方解
 過ぎ去っていない衝撃が半ば過ぎ去っている持ち越し、海のゆれ動きの如く寄せては返す白衣の看護婦と赤十字、ロッテという名の看護婦(プラウストの人)、ホラッツ博士のところの看護婦インゲ、エルニとかベルニとかいったポーランド郵便局防衛戦後の看護婦たちの中の一人、ハノーファー大学の名もない看護婦たち、デュッセルドルフ市立病院の看護婦たち、なかんずくゲルトルート、ツァイトラーの住居にオスカルと同じく間借りして住んでいた看護婦ドロテーア・ケーンゲッター、マリア病院と呼ばれている最寄りの乗車駅や病院の煉瓦造りの玄関や前庭、そしてビットヴェークでも看護婦たちはオスカルに見てもらうためであるかのように世界を過る。帰って来る足音や隣室の物音がドロテーアに拡張すると同時に一気に足音や物音に収縮し、浴槽の方へ林檎を転がさずにはいられないほど静寂が耐え難く、静寂が覗き穴になるスリル、盗み見るドロテーア宛に二通目、三通目と届く葉書の差出人エーリヒ・ヴェルナー博士がオスカルに覗いてもらうためであるかのように気配づく。つまり、あのマツェラートの洋服箪笥の暗がりに導かれて練習した告解聴聞、形相を変えて移動して来ていた「ポーランド人の国」の微細な光景が、失われてしまいまだ失われていないのである。

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