碧痕111 模写の頓挫、転移の衝撃
111 模写の頓挫、転移の衝撃
或る音楽が、或る広告が、その音曲が巷に流れ、そのポスターが壁に破れかけていた時代を(証明できない全体を)一気に呼び戻して胸が張り裂けんばかりに拡張し、胸が潰れんばかりに一気に収縮する、その抽象のエラー状態、しかも遠くして近い長目の効果に包まれ、こんなにも公的なのにそのことが確かに居合わせていたことを何も証明しないどころか実は極端に私的なために反撃を蒙って感光しない、そのことに面しての、戦慄、華厳、ピンぼけ、或いは、脳髄から胃袋、顎を貫く大あくび、何かが食虫植物のようにあぎとをひらきっ放しで、時代を目撃することと消化されてしまうことと区別がつかない。
戦地から丸縁の眼鏡と軍靴になって帰還する、或いは幾年月共に暮らしてきた犬が毛皮になって届けられる、こうした場合も、模写は頓挫して胸は決壊するが、丸縁眼鏡と軍靴を撮影した写真が薄気味悪く迫るのはどうしたことだろう。それは、虚構の気配が消せない提喩の頓挫ではなく、転移の衝撃、感光するはずのないmetamorphosis が感光してしまっているかのような衝撃である。ゴーストがかかっているのは写真であるが、被写体に転移するのである。
或る音楽が、或る広告が、その音曲が巷に流れ、そのポスターが壁に破れかけていた時代を(証明できない全体を)一気に呼び戻して胸が張り裂けんばかりに拡張し、胸が潰れんばかりに一気に収縮する、その抽象のエラー状態、しかも遠くして近い長目の効果に包まれ、こんなにも公的なのにそのことが確かに居合わせていたことを何も証明しないどころか実は極端に私的なために反撃を蒙って感光しない、そのことに面しての、戦慄、華厳、ピンぼけ、或いは、脳髄から胃袋、顎を貫く大あくび、何かが食虫植物のようにあぎとをひらきっ放しで、時代を目撃することと消化されてしまうことと区別がつかない。
戦地から丸縁の眼鏡と軍靴になって帰還する、或いは幾年月共に暮らしてきた犬が毛皮になって届けられる、こうした場合も、模写は頓挫して胸は決壊するが、丸縁眼鏡と軍靴を撮影した写真が薄気味悪く迫るのはどうしたことだろう。それは、虚構の気配が消せない提喩の頓挫ではなく、転移の衝撃、感光するはずのないmetamorphosis が感光してしまっているかのような衝撃である。ゴーストがかかっているのは写真であるが、被写体に転移するのである。


0 Comments:
Post a Comment
<< Home