碧痕142 渾身の偽造、渾身の覗き穴
142 渾身の偽造、渾身の覗き穴
自殺は、失神(擬死)や地に滅入り込むような深い鬱を潔しとしない。しかし、それはエラーである。失神の禁止がエラーの症状として自殺を惹起する。エラーは、禁止すると同時に埋め合わせる。
嘘は、擬態の気配を消す擬態の野心を潔しとしない。擬態の禁止に於いては、擬態の気配が消せないエラーの症状が嘘である。嘘は、「私」というものや直しさを潔しとしない。
「トリコロール 白」(Kieslowski)のEros、偽の葬儀、嘘の死を以て恋うる人をポーランドまで引き寄せることができるか、出来なければ魂などくれてやる、という賭けは、「白」のErosが、擬死と自殺の間に宙吊りになっているかに見える。
部分が全体を代表する、その擬態の気配が消せない不意の飛躍が「魂」の肉薄であるが、部分は限りなく入れ子になり、限りなく「魂」は後退するかの如く、拡張すると同時に収縮する。運動であれ静止であれ、中間を突破する何か不易で一貫したもの(種や「私」や寿命を鎧ったもの、均されたもの)も実体はなく、擬態の気配が消せずに不意に「魂」に飛躍する。この二つの「魂」は、出現すると同時に潜伏するghost の、その「化」の、その二つの擬態(平均化、単純化)の気配が消せないエラーの症状であり、嘘と区別がつかない。
つまり、「白」のErosは、失神するのでもなく、擬死の禁止が自殺として発症するのでもなく、そのスリルは、偽の葬儀、嘘の死を通して、胸が張り裂けんばかりに拡張すると同時に胸が潰れんばかりに収縮する「魂」の(嘘の)、何処からともなく冬のショウ・ウィンドーに少女の頭部の脆い石膏像を(ついいましがた「天使」が通ったとでもいうように)ズーム・アップして来る、その渾身の望遠である。
しかも、この、この世にいてこの世にいないことの、その渾身の覗き穴からの望遠は、反転しなければならない。人と人の間に葬られる偽装の死亡まで工作して望遠したのは、対い形成が間に合わせに過ぎないことに耐えるとも甘んずるとも潔いともつかない女を掬い上げるためであり、そのために敢えて死亡したことにした男の萎縮した置き換え難さを拡張するのも、同じようにしてこの世にいてこの世にいないことの、その覗き穴でなければならないが、それが、女が誰でもなくなるような偽造の気配の異国での、陰謀じみた遺産相続が殺人容疑に一転することによる被隔離である。
これは、女が鎧う「私」が脅かされている、その極で極端に私的になっているのである。というのも、男の陰謀は、渾身の秘密を分け合うために毒を盛るようなことだからである。
パリ、ワルシャワ、大掛かりな迂回を通して、脆い石膏像が、鉄格子の嵌まった冬の窓の灯のなかに受肉する、渾身。
自殺は、失神(擬死)や地に滅入り込むような深い鬱を潔しとしない。しかし、それはエラーである。失神の禁止がエラーの症状として自殺を惹起する。エラーは、禁止すると同時に埋め合わせる。
嘘は、擬態の気配を消す擬態の野心を潔しとしない。擬態の禁止に於いては、擬態の気配が消せないエラーの症状が嘘である。嘘は、「私」というものや直しさを潔しとしない。
「トリコロール 白」(Kieslowski)のEros、偽の葬儀、嘘の死を以て恋うる人をポーランドまで引き寄せることができるか、出来なければ魂などくれてやる、という賭けは、「白」のErosが、擬死と自殺の間に宙吊りになっているかに見える。
部分が全体を代表する、その擬態の気配が消せない不意の飛躍が「魂」の肉薄であるが、部分は限りなく入れ子になり、限りなく「魂」は後退するかの如く、拡張すると同時に収縮する。運動であれ静止であれ、中間を突破する何か不易で一貫したもの(種や「私」や寿命を鎧ったもの、均されたもの)も実体はなく、擬態の気配が消せずに不意に「魂」に飛躍する。この二つの「魂」は、出現すると同時に潜伏するghost の、その「化」の、その二つの擬態(平均化、単純化)の気配が消せないエラーの症状であり、嘘と区別がつかない。
つまり、「白」のErosは、失神するのでもなく、擬死の禁止が自殺として発症するのでもなく、そのスリルは、偽の葬儀、嘘の死を通して、胸が張り裂けんばかりに拡張すると同時に胸が潰れんばかりに収縮する「魂」の(嘘の)、何処からともなく冬のショウ・ウィンドーに少女の頭部の脆い石膏像を(ついいましがた「天使」が通ったとでもいうように)ズーム・アップして来る、その渾身の望遠である。
しかも、この、この世にいてこの世にいないことの、その渾身の覗き穴からの望遠は、反転しなければならない。人と人の間に葬られる偽装の死亡まで工作して望遠したのは、対い形成が間に合わせに過ぎないことに耐えるとも甘んずるとも潔いともつかない女を掬い上げるためであり、そのために敢えて死亡したことにした男の萎縮した置き換え難さを拡張するのも、同じようにしてこの世にいてこの世にいないことの、その覗き穴でなければならないが、それが、女が誰でもなくなるような偽造の気配の異国での、陰謀じみた遺産相続が殺人容疑に一転することによる被隔離である。
これは、女が鎧う「私」が脅かされている、その極で極端に私的になっているのである。というのも、男の陰謀は、渾身の秘密を分け合うために毒を盛るようなことだからである。
パリ、ワルシャワ、大掛かりな迂回を通して、脆い石膏像が、鉄格子の嵌まった冬の窓の灯のなかに受肉する、渾身。


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