Thursday, February 02, 2012

碧痕151 Alien、龍、監視カメラ

151 Alien、龍、監視カメラ
 Michael Haneke 71 fragmente(71 fragments of a chronology of chance)
 ブルガリアから国境を越え、夜の闇を押しのけるウィーンの光暈を遠く目にして、模写発作に惚恍が顔面に顕れる少年の、その後の足取りに最も多く監視カメラの焦点は合わされるが、同じウィーンながら(山岳を隔てるように)ばらばらに片隅で煩悩を日々営む人々が、更にばらばらに世界各地で起こっている出来事に(TVを通して)壁紙のように遠巻かれながら、1993年12月の或る日或る時刻に或る銀行で居合わせることになり、発作的な無差別殺傷事件に巻き込まれる。監視カメラの選択は無差別にして選り抜きである。潰滅的な作用を及ぼすパニックが起こらずとも、白い息を吐くウィーンは被曝して宙に浮いているが、東京では(TVを通して)壁紙のように遠巻く世界の出来事の断片的光景でしかない。
 2011,03.11 東日本
 岸からみるみる潮が引き、数10㍍先の海底が見えるほど海岸線が後退すると、沖に白い波が見えてきた・・・車や家屋をのみこみ、がれきの山にしか見えない高さ約20㍍の津波だった・・・
 真っ黒な津波は「でっかい芋虫みたいな動きで、モコモコと迫ってきた」・・・内海の広田湾からも波が押し寄せた・・・「新幹線よりも速く」普通の海の色に近かった・・・
 通りかかったお年寄りの女性をおんぶし、左手にはもう一人の女性を抱きかかえ・・・高台にある熊野神社を目指した・・・遠くから地鳴りとともに、バキバキと木が折れる音、「プシュー」というガスが漏れるような不気味な音が聞こえ、焦げ茶色の波がみるみる町を覆っていった・・・
 民家の屋根に乗って家ごと流されている人もいたが、覆いかぶさる波にのまれて見えなくなった・・
 ブルドーザーの走行ベルトだけが走ってきたように感じた・・・
 自宅兼医院に入ると、近所の人や面識のない人までが血相を変えて上の階へと駆け上がっていた・・
 「洗濯機の水流があらゆるところからくるように、これでもか、これでもかともまれた」体は前後左右に不規則に回転し・・・
 水中でがれきや柱がぶつかる音が聞こえる。見えるのは車やガスボンベ、タイヤなどばかり・・・
 民家の屋根に乗り上げていた。チャプンチャプンという水の音もした「なぜか必死でブレーキを踏み続けていた」
 母は津波で流されてきたがれきの下敷きになっていた・・・そんな時、口から泡を吹き出しながら流されてきた五歳ぐらいの男の子を助けた。割れたガラス窓から寒風が吹き込み、自分の吐く息は白かった。男の子からも白い息が漏れていた・・・小便が真っ黒になっているのに気づいた。どぶのような臭いがした・・・

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