碧痕171 何か伸びる
171 何か伸びる
白い土埃に半ば車体を隠してバスが車体を揺らして小さくなっていく。
これは、昭和27年夏のありふれた光景、忘れないための被写体の痕跡でも叙述でもなく、この世の不思議なことどもに面して、何か忘れられないものの出現と潜伏の区別がつかずに、ピンぼけなのである。
小さく縮んでいって終に見えなくなっても、強力な望遠鏡を覗けば形と大きさを呼び戻す効果や、覗いても外国船は跡形もなく水平線に消えたかに見え、跡形もなく消えたかに見えても鉄路に耳を当てれば及ばない遠方から音が届く、そのような屈折や延長は、遠いというだけで見えない、このことを何も解明しないし、解消もしない。近いというだけで見えるのか、「私」というものが縮んだ分だけ何か伸びる、というようなことがあるものだろうか。
白い土埃に半ば車体を隠してバスが車体を揺らして小さくなっていく。
これは、昭和27年夏のありふれた光景、忘れないための被写体の痕跡でも叙述でもなく、この世の不思議なことどもに面して、何か忘れられないものの出現と潜伏の区別がつかずに、ピンぼけなのである。
小さく縮んでいって終に見えなくなっても、強力な望遠鏡を覗けば形と大きさを呼び戻す効果や、覗いても外国船は跡形もなく水平線に消えたかに見え、跡形もなく消えたかに見えても鉄路に耳を当てれば及ばない遠方から音が届く、そのような屈折や延長は、遠いというだけで見えない、このことを何も解明しないし、解消もしない。近いというだけで見えるのか、「私」というものが縮んだ分だけ何か伸びる、というようなことがあるものだろうか。


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