Monday, April 16, 2012

碧痕175 地獄の山の草となって生える

175 地獄の山の草となって生える
 思えばこんなにも遠くまで、別の座標系へ出たはずなのに、そうではなく、座標系そのものが失効して方角を見失う。眩暈や船酔いなど神経や内臓の撹乱は、或る日常と別の日常の境目が移動のために突破するはずの中間ではなく、今の極点が地下墳墓のように気配づく裂目に面しての生体反応である。今の極点に浮上した「アポロンの島」の、その宙ぶらりんに面しては、模写発作ではなく転移発作となってコノ島デ女ト暮ラスコトが錯誤の如くに思いつかれる。それは、埋葬されている今の極点を座標系に位置づけようと藻掻くのである。
 戦争はもう終わっているのではないか、といった宙吊りの南島にとり残されて、顔の筋肉がほころんでどうしようもない模写発作の一方で、「出発は遂に訪れず」して或る秩序から別の秩序へ移る中間で、コノ島デ女ト暮ラスコト(転移発作)は、特攻艇から信管をはずしておくよう命令する秩序には転入されずに行方知れずになる。
 この、行方知れずになっていたコノ島デ女ト暮ラスコトが、「アポロンの島」に昆虫のように息づいていたために、その祟り返しに(地獄の山の草となって生えているのに)ぎょっとするのである。

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