Thursday, April 19, 2012

碧痕176 「君の名は」:珠玉の転移

176 「君の名は」:珠玉の転移
 それは、決定的な越境であり、呼び出しをくらったのであり、長大な時間を犠牲にして届く虚数の解に遭遇しているのであり、何か忘れられないものの出現と潜伏の区別がつかずに、ピンぼけなのである。
 複数の次元で位置は同じなのに何か一つの次元で位置が致命的に食い違っていることが、巡り逢う断面とすれ違う断面とに分割されて、何か届かない。大気を組成するメランコリーそのものである大きな顔に被曝して、身を隠していたいのに隠れない。
 ところで、メランコリーの大気の底で、マチコ(ヒロインの「君」)がときおり大あくびをする、といったうわさは耳にしない。
 ところでまた、大あくびが「君」の顔に移し出されているのに面してぎょっとするのは、驚きには違いないが、むしろ天の岩戸のこじ開けられた隙間で思わず女神の唇から漏れ出した、オモシロ(面白)シ、の範疇である。それは、暗闇からしか現れないが暗闇には属さない。

註 大あくびは目撃されていない。しかし、君ノ名ハト尋ネシ、ソノ人ノ名ヲ、砂山ノ「浜昼顔ニキイテミル」のは、珠玉の転移である。

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