Monday, May 07, 2012

碧痕182 敷延強迫

182 敷延強迫
父娘姦の祟り返しは、玉梓の呪いであるかの如く、八房に拉致されたかのように伏姫は魘(おそ)われ(止水に映った、体は人のままにして犬に変わり果てた頭にギョッとして)身震いして獣姦を打ち消そうとする。
八犬士の間に出現するが実体のない八房は、八犬士の平均ではなく、八犬士がそれぞれ独自に模写する全体でもなく、命令(霊、予期)としての八房に矛盾しない範囲で八つにずれた即興(的服従)の、その具体にかかるゴーストがこの世の姿をとった感応である。
この世の姿をとる限り、八犬士は器官の延長であることや二重性の禁止を鎧うはずであるが、器官の延長としての分業の、その美徳である仁義礼智忠信孝悌は、この禁止をおかさないではいない。
金碗大輔が八房を射殺する、その弾が貫通して伏姫をも射殺する。この誤射が玉梓の首の呪いであるとすれば、それは、仁義礼智忠信孝悌が分業の美徳であるのにいかに棲み分けないか、それなのに一つの道理を押し通すことの野蛮、不正の反復である。どの美徳に準拠するかで道理は背馳するし、道理かどうかは精々説き伏せられるかどうかでしかない。
玉梓の首がつきまとうのは、こうした祟り返しを編纂、監修する如く敷延し続けることである。

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