碧痕201 発端に潜む何か二重のもの
201 発端に潜む何か二重のもの
伏姫の烈女振り観音振りは、チクショウ!という密かな叫び、罵り、瞋恚、絶叫を打ち消していて、その畜生振りは、玉梓の生首を乗っ取って祟り返す。その生首は、伏姫を生贄にするように義実を唆す。思いがけない思考が義実に生首を通して届くのである。更には、八房を哺育した牝狸を乗っ取って八百比丘尼妙椿としてこの世に姿を現わし、伏姫の感応し易さから浜路の攫われ易さに狙いをうつして、浜路略取を素藤に吹き込む。一方、その観音振りは、忍ヶ岡の九尾の牝狐を乗っ取って妙椿の来歴を犬江親兵衛に密告する。八房は伏姫の人面瘡であり、九尾の牝狐と妙椿狸はその二重分身であり、この密告は恐喝である。素藤の人面瘡妙椿の二重分身(玉面嬢と疫鬼)の恐喝は素藤を権力の恐慌へ誘い、伏姫の人面瘡八房の二重分身は犬江親兵衛を「私」というものの恐慌(二度生まれること)へ誘う。犬江親兵衛にかかる伏姫の、生贄であることの気配(化の気配)や、八百比丘尼妙椿や九尾の牝狐の長寿の気配(狐狸の気配)に魘されてしまうのである。
伏姫(八房)は人面獣身の相にして、観音振りが畜生振りに騎乗している。伏姫の万能振りが玉梓の生首を通して、その三相の腹話が照らし出すのは、生贄であることである。これが、発端に潜む何か二重のものである。
その三相の腹話が導くのは八方に散って行方知れずになっていた八重分身であるが、それは、媒体性のこの世の姿をしたparaphraseとしての器官の延長であり、器官の延長としての分業であり、美徳であるが、不断に邪悪なものや厄禍、讒訴や追捕の気配に包囲されて脅かされている限りでこの世の姿を鎧う。危機の極で伏姫の守護が及ぶのは、覗き穴が盗まれて「自由、孤独、思考」が脅かされるのであるが「狐憑き、類、生首」に切り替わる。これが、予告されていた「二度生まれる」ことである。


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