Friday, July 06, 2012

碧痕202 怪談の出像

202 怪談の出像  甲羅を経た巨大な鯉に振り落とされないように若き日の義実が豆の大きさでしがみつく図、しかし、そのような場面はないどころか、そもそも南総の風土に鯉は生じないとされる。そのことを知らずに、贄にするために鯉を漁ろうとしていたときに、ひどく漆かぶれした顔に身を窶した男が現れる。下克上にあった神余の忠臣金碗八郎である。これが贄の身代わりになって義実を導く。次に義実を導く生贄は、騎乗するとも拉致されるともつかない人面獣身の伏姫である。このことから推して、幻の巨鯉は里美義実を魘(おそ)う人面瘡である。  里美義実は伏姫を生贄にしたことを忘れているかのようであるが、そうではなく、伏姫に生贄であることが顕れたために義実は生贄であることが度忘れ状態なのであり、躍り騰がった幻の巨鯉に義実が豆の大きさでしがみつく図は、身を隠していたいのに隠れない怪談の出像なのである。

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