碧痕210 変形
210 変形
デフォルメは、変形であっても模写(抽象)である。この抽象がunlearn しない限り、戦慄や笑いといった発作を以て模写されるような虚実の裂目も出現しない。もっとも、unlearn したとしても大抵は実を鎧い、半陰影の裂目がみひらくのではない。概して、1具体として実を鎧うデフォルメであるか、2unlearn した解が実を鎧う(擬態の気配を消す)か、3その解が半陰影(擬態が解ける)かである。
貞子(「リング」中田秀夫)は、うわさが漂っていられる共同体の神の、1そのデフォルメであるか、2その衝動がunlearn した解(身代わりに生き延びるもの)の蔭(場所・意味)となって潜伏するか、3その場所・意味が氾濫して不気味であるかである。
井戸の底から回収された遺骸が貞子であるかどうかは疑わしい。解剖所見では死亡の推定時期が30年前ではなく2年前に過ぎないからである。爪はすべて剥がれている。これは、執念というもののデフォルメ、或いは目配せである。死体を尋ねたもう一人のマリアが出くわしたのは遺骸ではなく思いがけない思考の閃光すなわち「復活」であったが、うわさのように「復活」が漂い始めた共同体で、それは、釘づけの磔刑の十字の、1デフォルメであるか、2その衝動が身代わりに生き延びるものの蔭(場所・意味)となって潜伏するか、3その場所・意味が剥き出しになって被曝するかであるが、貞子の剥き出しになる兇眼は、この被曝のデフォルメである。
場所・意味となって潜伏する神は潜伏する限りで安堵の蔭であるが、何処デモナイ意味に(不気味に)被曝して共同体は宙に浮いてしまう。貞子のビデオをコピーし続け、着信を転送し続けるのは、身代わりに生き延びる衝動が蔭(疚しさ)となって潜伏しない(神の)気配に被曝して、身代わりであることを他の誰かの身体に移してデフォルメするのである。このデフォルメには、転移発作と模写発作とが重なっている。


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