Thursday, February 07, 2013

碧痕274 超個体的な出来事の報告

274 超個体的な出来事の報告  超個体的な出来事の全貌を、複数の個体の記憶の水準に覗き穴を限定して断片を継ぎ接ぎに浮かび上がらせようとする報告は、ホメロス的報告を寸断、ばらばらにして超個体的なものを打ち消そうとするかに見えて、実はそうではない。「あの不幸な日曜日のことを想うとき、今でもはっきりと目に浮ぶのは、中庭の真ん中の丸椅子にぽつんと腰掛けていた、老いたポンシオ・ビカリオの」盲になりたての表情で、真っ白な頭を四方八方に動かし、「自分に向けられたのではない問に答えたり、相手もいないのに慌てて挨拶を返したりしていた」その、誰からも忘れ去られながらも幸せそうな暗闇に、一瞥にしてとまではいわぬまでも知らぬ間に感染してしまっているのである。諸々の目撃や証言は、この暗闇から伸びた覗き穴が焦点を絞った情景であり、目撃も光景も何か超個体的なものの「力の接触」が占拠している。(「予告された殺人の記録」G.Marquez)  この暗闇は、サンティアゴ・ナサールが屠殺される前の状態にも感染している。広場に出ると人々が詰め掛けていて、四方八方から警告の声や指示が次々と掛けられるので、前を向いたり後ろを向いたり声の主が何処かつかめない突然の失明状態にサンティアゴ・ナサールは陥るとも吊り上げられるともつかない。殺サレルゾという警告は宣告とも報告とも区別できない。

0 Comments:

Post a Comment

<< Home