Sunday, February 10, 2013

碧痕275 超個体的なものの前触れ

275 超個体的なものの前触れ  屠殺の朝に、司祭を乗せて(かねてより万端歓迎の用意をしていたにしては)なんとも呆気なく素通りした船の通過が幻じみているのは、この超個体的な出来事(apparition-like suddenness)の前触れである。(「予告された殺人の記録」G.Marquez)  事件の後、花嫁アンヘラ・ビカリオは生きながら埋葬されて、僻地で来る日も来る日も際限もなく刺繍をして過ごすが、「亡霊」が取り憑いて猛威を振るった花婿バヤルド・サン・ロマン宛てに17年に渡って際限もなく刺繍をする如く手紙を出し続ける。それは、事件は終わっているのではなく潜伏しているということであり、孤独なのではなく、魘されているのである。つまり、最初にアンヘラ・ビカリオにのしかかった「聖人」こそはバヤルド・サン・ロマンの器官の延長であって、バヤルド・サン・ロマンの到来を前触れていたのである。  こうした超個体的な気配に、サンティアゴ・ナサールが屠殺される直前の状態、孤独も認識も剥奪された被監視状態は触れているが、サンティアゴ・ナサールが、切り裂かれた腹からはみ出した「自分の美しい青い腸」に泥がついたのを気にしてゆすって落とそうとするのは、この忽然と出現した擬似奥行(訂正のきかない現実)から抜け出し、失跡を取り消そうと反抗する如くである。

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