碧痕277 ピンぼけ、鮮明なピンぼけ
277 ピンぼけ、鮮明なピンぼけ
虚構は、虚構の気配を消すために、いたずらじみた偶然を禁じ、蓋然性や精々跳躍したところで意外性に留まる。複数の個体に器官を延長することで虚構の気配を打ち消そうとするルポルタージュを以てしても、証言の、記憶違いや関心の焦点の絞り具合や故意の或いは知らず知らずの言い落としや被誘導や端的に嘘はないか吟味する妥当要求の泥沼に嵌りこむか、さもなければ、個々の伝聞の間に個々の伝聞の最終状態のように顕れる平均性と、隠れていたものが他の誰かを通して顕れる効果に留まる。それも、タイム・スリップするような覗き穴の逆効果が加わって別の惑星の大気が迫れば、嘘じみてしまう。すなわち(ピンぼけして)運命じみてしまう。その「力の接触」は出来事を占拠するが、その奇妙な横溢は場所を占めない。妥当要求は失効する。
「予告された殺人の記録」(G.Marquez )は、虚構の気配を消せないで妥当要求が失効しているのか、それとも、虚構じみた(しかし、うむをいわせない)ことが起こったことの報告が虚構の気配を消して、しかも妥当要求の泥沼にも陥らずにいるのか、つまり、ピンぼけなのか、鮮明なピンぼけなのか、区別がつかない。この混沌は、超個体的なものが事件(顕在内容)を占拠したり、事件が場所(潜在内容)を占めたり、その不断の新陳代謝に魘されているのである。


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