碧騒307 個体の頓挫
307 個体の頓挫
1=0.999・・・
これは、一目惚れの数学的paraphraseである。
一目惚れは、直観的に見えて直観に反する何かであり、個体に届いたようで個体に届かない。個体に、種・偽・全体・場所(・意味)が区別をおかされ浮上して蜻蛉を切ってしるしに転じて意味深くなり、初めてなのに約束の気配がする。個体は分割できないが、そのことは、どうして直観に反する何かの気配を消せないのか。精神分析的とは、他の誰かの頭を通してやって来る思考、筒抜けの思考、直観に反する何かの気配を消せない思考、中間突破や本質の頓挫であり、個体の隠喩性を、従って個体の頓挫を剥き出しにする忽光である。
これは、竹林に虎を目撃したので写真撮影したが、現像した写真からは虎が掻き消えていたというのにどこか似ている。虎の擬装(縦縞の隠蓑)が完璧にカメラの眼を欺いた写真は竹林に溶け込んだ虎(の擬装)の陰画的な記録であり、竹林に虎はいないように見えて潜んでいるはずである。この陰画性と擬装の気配が消えない二重性は、一目惚れが直観に反した何かの気配を消せないこと、個体が場所を占めない気配(個体であることに面して媒体であることに面してしまう気配)が消えない個体の頓挫に対応している。もっとも、虎の擬装は個体が場所を占める直観の領域、個体が寿命を鎧う擬態の、その気配を消した領域に属し、一目惚れは擬態の気配が消えない個体の頓挫、種・偽・全体・場所(・意味)があふれ出してしまうのである。


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