Thursday, July 04, 2013

碧騒323 振動の精

323 振動の精  「タイムマシン」で取り扱われた問題(興味)は、「The Invisible Man」(H.G.Wells)に転生する。つまり、解決したのではなく、持ち越されている。幽霊性のparamorph なのであるが、何か様相が違う。被狩猟、被追跡の症状は、このおぞましい(異形の)姿の見えない人にも顕れて追い詰めるが、陰画的にはたらいて、普通に分業している人々に転写されている。すなわち、被恐怖政治の症状である。何処ニトモナク潜んでいてイツデモ何処カラトモナク襲いかかるテロルの気配が支配的なのである。この「透明人間」の輪郭は見えないがくっきりしているのは、「つぎの瞬間にはシャツがもちあがって、くねくね動きだした。ちょうど人間がそれを頭から脱ぐときの格好」であるとか「振り返ると石が空中にひょいと跳び上がり、複雑な軌跡を描いたかと思うと一瞬停止し、それから」足めがけてこちらへ飛んで来る、というように、陰画的であるからで、普通の人々がテロルに追い詰められるのは、被狩猟、被追跡の症状の陽画なのである。つまり、食うものと食われるものの収斂、振動が、社会的、政治的水準に位相、様相を変えているのである。グロテスクなのは、透明人間のおぞましい異形性というより、この振動である。  仏教説話に出て来るあの、私ヲ食ベテ下サイ と言って身を火に投じた兎や、本能寺の炎上が何かグロテスクだとすれば、この振動の精である。

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