Thursday, September 05, 2013

碧騒344 蜒々と根拠があるかのように見せかける

344 蜒々と根拠があるかのように見せかける  グレゴール・ザムザが毒虫に「変身」(F.Kafka )したのは、家族に人面瘡が顕れ、見てはならないものを見てしまうのである。それは、卑猥な腹を見せて引っ繰り返るともう正常位を回復しえずに足掻く多足をぴらぴらさせてぶざまに(しかし、コンナモノガオナカニイタノカ、というように)食い破って出たが、この変形は家族の器官の延長であるのに座敷牢に閉じ込めなければならない。その密室を、妹は何度も覗かずにはいられない。何か種、偽、全体、場所(・意味)と区別のつかないものが占拠しているからである。家族は死体を隠そうとしているのではなく、「鉄カブト虫」のように極端に寿命の短い極端に私的な昆虫が死体に蝉脱するように息を詰めているのである。死体の葬式は、達磨の西来意を問う如く、家族に蜒々と根拠があるかのように見せかけるからである。  「骨餓身(ホネガミ)峠 死人(ホトケ)葛」(野坂昭如)は、優曇華の如き蛆が死体に蝉脱するまで何度も息を詰めて覗かずにはいられない。ホネガミ峠、葛坑の部落は石炭よりもホトケカズラの出そうな場所で、頭の中の胎児がそこで系統発生を一気に経過する水頭症のような人面瘡があちこちに転移して告白するのは、超個体的なものが占拠する食物連鎖である。分業としての有性生殖が産出した赤ん坊(死体)から卒塔婆にからみついたホトケカズラが養分を吸い上げ、その滋養が凝縮したホトケカズラの実から良質の澱粉を寄生的に摂取するいや継ぎ継ぎの有性生殖の、その器官の延長の最終状態は、何か種、偽、全体、場所(・意味)と区別がつかない。坑道で男が這いつくばって掘り女が這いつくばって運ぶ分業は交合のカノンであり、それが身分をおかす兄妹相姦、父娘相姦になったとしても有性生殖の秩序に矛盾することはなく、それが生殖頓挫の母娘相姦になったとしてもホトケカズラの寄生に矛盾することはない。崩れ落ちていく記憶の廃墟に露出することになった古い衝動のために、押し入れに米味噌バター肉梅干し等々の食糧を見境なくただもう貯蔵しないではいられない症状のように、「骨餓身峠死人葛」が座敷牢のようなホネガミ峠のカズラ坑に死体を詰め込まずにはいられないのは、生きることに蜒々と根拠があるかのように見せかけるのである。

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