碧空511 Draculaの断面
511 Draculaの断面
この世のものとこの世ならぬものの差異には、「摩訶止観」ふうに言えば粗と精があって、粗では、それは程度の差に過ぎず、どちらも時間がかかるこの世のものであることに変わりはない。精では、この世ならぬものはこの世のものが鎧う時間が解けて物と場所の区別がおかされてしまう。Dracula 伯爵が鏡に映らないのは、Dracula 伯爵とDracula の差異が明晰になる胸騒ぎのようなもので、粗としては、Dracula 伯爵は部屋と区別がおかされた仮のもの(it)、従って実は鏡に映っていることになってこの世のものであるが、精としては、物と場所が解離しないことが伯爵と部屋の区別がおかされていることに転写され、こちらからは見えないがむこうからは見える存在を前触れている。
この転写は、物と場所が解離しないmetamorphosis の、その断面に出たのである。捕食連鎖の極点、選び抜かれた輪郭の極点で輪郭を喪失してしまうような入れ子状態の捕食連鎖、夢遊病、海から迫る嵐の気配がDracula の到来の前触れであるのも、この断面に出たのである。


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