Friday, July 31, 2015

碧空580 発芽の遠い谺

580 発芽の遠い谺  「緋色の研究」の含蓄は、その復讐譚とミステリが夢式に方解していることである。そこでは、誰もいなくなるのではないが、姿を晦ましている窮極の隣人「the sense of some presence」に入れ替わって壁掛けの裏に隠れて息をひそめていた誰かが(隠喩の気配を消して)姿を現すことになる。  有性生殖のただ中で、所有に面してそのことが疑わしい疾とは、器官の延長の極で分身してしまう(しかしこの分身は一体誰なのか)そうした、発芽の遠い谺である。  復讐は不倶戴天の分身を(余計なものを)消去して生き延びようとするが、これは、分身に入れ替わる(取り憑かれる)のである。窮極の隣人の気配を消して姿を現す、この入れ替わりがミステリにも復讐譚にもかかるゴーストなのである。入れ替わりが錯綜する「Hamlet」は、この遠い谺を、皆殺しの気配、全滅の気配を以て変奏する。

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