Monday, August 24, 2015

碧空595 ホロコーストの気配

595 ホロコーストの気配  「映像が浮かび出る瞬間のスリル・・・現像液に浸した原板の空白の面に突然しみのようなものが現れ、その色がだんだん濃くなり、急速度でひろがる・・・まだ何もはっきりとは見えず、しばらくは光と影の混淆」に過ぎないが「急にはっとする・・・それまで何も見えなかった原板の上にすべてのものが鮮やかに浮かび出る」のを息を殺して見守る、するとなんと「画面は暗くなり、またもや何も見えなくなってしまう。」(「Unfinished Portrait」A.Christie)  肖像が未完であるのは、肖像の最終状態が肖像の陰画であるからである。Quinn― William Wilson―Max Workの三つ組に対応するのは、JL(God)―Ghost(JL)―Celia(JC) である。Celia の告白は、肖像画家であったが腕が擂り粉木になってしまったJLの腹話術にかかっており、擂り粉木状態の腕は人面瘡のようでもあり、更には、「私自身」の再帰性(0.9recursion)を追跡しようとする思考が他の誰かの頭を通してやって来る精神分析でもある。「the sense of some presence」(「もうひとりいる!」気配)が、脅かしかける銃をもった男や薄気味悪く迫る「私自身」に変装して、ミステリのようにも怪談のようにも精神分析のようにも零落しているのである。  Celia を脅かす銃をもったphantom はどこにでも隠れ潜んでいるだけでなく、世界そのものがあてにならなくなる。何よりも身近で何よりも疎々しい内臓のような基盤が「私」というものを解いてしまい、糸のないマリオネット状態、zo-oid状態、奇形嚢腫の気配になってしまう。

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