Sunday, August 30, 2015

碧空599 制御不能の思考発作

599 制御不能の思考発作  「Quinn froze 」これは、「世界が終わっている!」発作である。Quinn がectopia に出たのである。駅の、押し寄せふくれ上がる雑踏のただ中で、Stillman senior の若き日の写真と加齢変化を考慮してStillman教授の顔を探し出そうとするQuinn のカメラ・アイの、その能所が突如として入れ替わる。それは、後にStillman教授を尾行しているときに、Quinn がQuinn の住んでいる番地へと誘導されているのではないかと突如として制御不能の思考発作に襲われるfree fall を以て後発している。(「City of Glass」P.Auster)  Quinn が立ち竦んだのは、雑踏を地にして浮かび上がったStillman教授が、若き日の写真に矛盾しない範囲でずれる他の解を打ち消せていないfree fall である。はげ上がってこそいないが髪も梳らずよれよれの外套をまとい、オンボロ鞄に引きずられるように歩くStillman教授が立ち止まってライターを点火した決定的瞬間に、教授の肩のすぐうしろにもう一人のStillman、しかしパリッとして見るからに裕福そうなStillman氏がまるでアウラやエクトプラズムや福相のように出て来たのである。  それは、オマエノコトナンダゾというように出て来たのであるが、カメラ・アイの能所はまた入れ替わって竦みをとく。Quinn が解かなければならない命令は、反対の方向にアミーバのように岐れるStillmanのどちらかを(入れ替わらないように)選択しなければならないことである。  それは、「もうひとりいる!」ぞっとする気配が奇術のトリックに零落することであり、第一のStillman第二のStillmanというように順位をつけて先発のStillmanが他のありそうな解を代表する奇術を以てStillman教授が場所を占めるようになるのであるが、「the sense of some presence」がre-presence に零落するのはfree will からではなく、free will はこの制御不能の思考発作の効果である。

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