碧空604 不眠を極める収縮
604 不眠を極める収縮
Quinn はNew Yorkをあてどもなく彷徨う。それは、Stillman教授のようにあてどないと見せかける意図があるかのようで、覗き穴の能所が入れ替わっているのならば、残りのELの地上絵の続きを発信しているはずだ。Cityのどこにでも浮浪の、がらくたのような人々が屯していて、Quinn の心臓の鼓動や脈拍はCityのノイズの鼓動や時を刻む教会の鐘のリズムを転写し、路上に転がる物や名のできそこないやかけらや屑の網膜像を体表に転写するQuinn は、タンバリンを打ち合わせドラムを打ち叩くおもちゃの猿を、そのリズムの微細な変奏をして蛇使いのように坐り込んで転写しているクラリネット奏者のように、糸のないマリオネットである。これは擬態を鎧ったのではなく、擬態(free will )が解けるのである。Quinn は監視を続けていても隠れない。
しかしQuinn は気づかれない。監視するQuinn が機能するように、危惧する事態を眠っている間に見逃さないように、Quinn は覚醒と睡眠の交替を漸次早め、終には15分ごとに鳴らされる教会の鐘に対応するようになる。奇妙なことに、この「空腹の技法」を徹底して睡眠を零にすることは、覚醒も零にすることになる。このようにして不眠を極める収縮、眠らずに覚醒もしない混沌(free fall )の、その次元減衰した断面がタイム・スリップである。
「City of Glass」(P.Auster )は、このun-dead 状態を、「City of Glass 」そのものを、どう読むかの説明書である。


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