碧空615 腹話が降りかかる
615 腹話が降りかかる
Stories happen only to those who are able to tell them.(「The Locked Room」P.Auster)
stories をthemが代表した瞬間に二重性のトリックが入り込む。1 unlearn storiesと2 tell unlearned stories が曖昧に重なり合うのである。twice-told talesは2が二回話されることではなく、2には腹話術がかかっていることである。ゴーストがかかっているのであるが、その断面にはカノンがかかることになる。1のstories は解かれなければならない問であるが、この問が解としての2のstories を代表しようとして種に零落するのである。その限りで腹話は降りかかる。それは、告白なのか告発なのか、責め苦なのか責めなのか、怪談じみてもいればミステリじみてもいる。
「物語は発掘される」、これはtwice-told talesの、その霊的・抽象的な水準の問が具体となって解かれることの隠喩である。霊的なものが地上のもの(種)であるために、一瞬にしてどこにもない正当性の更新のために、不断に他の誰かが呼び出される。影武者が一旦この世に忍び込むと権力の所在がどこなのか分からなくなるように、生きる命令がどの世代にも属さないように、記憶が忽然として誰の記憶なのか分からなくなるように、twice-told talesの、どの世代のtales も管を通されていて、それをどう読むかもどう話すかの説明書(解かれなければならない問)が降りかかるのであり、漠として「話が盗まれている!」思いはなおらない。
まるで目的を欠いた偶然の岐路の弾みとまぐれと間違いのような事故だけが現実になるのに、漠とした目的の気配がしていて、解かれなければならない問が衝きつけられているのである。腹話が降りかかることは場所を占める出来事(の頓挫)であるが、目的が種に零落する限りで現実になろうとして再発する(カノンがかかる)のである。
Experiences present themselves only to those who are able to have them.(「The Locked Room」)同じようにして、これは、ゴーストがかかる既視の気配(経験の頓挫)で、その鬱勃とした二重の通過は、「他の誰かに降りかかっている!」である。


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