Friday, October 02, 2015

碧空620 無性の記憶、有性の物語、這い上がって来る目的の気配

620 無性の記憶、有性の物語、這い上がって来る目的の気配  アーサー王 の伝説では、土地と区別がつかないものは王とドラゴンである。ドラゴンの息がかかる王はどの王とも入れ替わるのであり、アーサーの出自はもう一体の発芽であるが、王が不在の間の王妃の姦通の果実であるかに見える。無性の記憶を隠そうとして、全体は種の水準に零落を戻して有性の物語が展開し、姦通は枝岐れしながら繰り返される。アーサーはランスロットに入れ替わり、グエネビアはモーガナに入れ替わってモルドレッドは誕生する。モルドレッドの出自が怪物じみるのは、無性の記憶と姦通や近親姦の物語との間でアーサーを脅かすモルドレッドは、足元から這い上がって来るドラゴンの息(漠とした目的の気配)が種に進化(零落)した有性の物語に個として呼び出されているが、全体に進化(零落)したドラゴンの息を記憶するもう一体の発芽でもあるからである。それは、アーサーの怪物性のエコーなのである。  有性の物語はアーサーがこの怪物性を退治することを要請するが、それは「駆り立てる力に滅ぼされる」イロニーであり、有性の物語は無性の記憶に進化(零落)を戻す。ドラゴンの息(薄気味悪く迫る漠とした目的の気配)は、種と全体の間に、物語と記憶の間に振動する。  この振動の、次元減衰した断面こそはカノンがかかる「聖杯」であって、「City of Glass」(P.Auster )の、その整然と錯綜するstreets のカオスにカノンがかかるのも、その変装だからである。

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