碧空694 天空の声(失語状態の肉声)
694 天空の声(失語状態の肉声)
碧空693 標本1或る女流画家が「内的な、だが異様な力にうながされて」いるかに見えるのは、即興の衝撃の、ピンぼけの効果である。それは、問としての「神秘な女性」の一つの解に過ぎないが、致命的になる。「描かざるをえないから描く」歪んだ大きな髪型や兜をつけた頭部が、「神秘な女性」の二重の潜伏に於いて、「神秘な女性」を映し出す媒体なのではなく、反転して、「神秘な女性」こそが兜をつけた女の頭部や深海植物群を映し出す。これは、運命がファンタジーに零落するのである。ファンタジーが扱うのは、complete privacy(奇妙なえこ贔屓、究極の隣人性)ではなく孤独、それは他の誰かを期待する。
日常(この世)は大規模なファンタジーで、法則や歴史を扱うが世界が見透せないのは、日常が種の夢を映し出すのではなく、日常が占めるように種の夢が日常を映し出す鏡(場所)に反転しているからである。
このようにして、「The Light of the World」(E.Hemingway )が剔出した一樹陰は、単なる一隅のどこからともない集散が忽光を放射することになる。アースされたこの世の孤独がcomplete privacyに連れ戻される被雷の気配であり、呆れるほどばかでかいというよりピンぼけの効果で図体の膨れた売笑婦が「Jesus Christ(ああおかしい)」と体ごと揺すって発する、この天空の声は、この失語状態の肉声である。


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