碧空755 空想の闖入(打ち消された「心臓と睡眠と消化」)
755 空想の闖入(打ち消された「心臓と睡眠と消化」)
「犬の鼻口部を観察していると、鼻口部が鼻口部に似ようとしているのが分かる。紐でぐるぐる巻きにしたくなる。」(「鉄カブト虫」下、孫次郎)
透視の次元は直しさ、自由が解けて媒体性が剥き出しになっているのに「自由意志」みたいで、思わず笑ってしまうのはおどろく裂目に面しての模写発作であるが、この、犬の鼻口部を紐でぐるぐる巻きにしたくなる発作も、この何か正体の知れない目に触れられて模写しようとするのである。
誰と入れ替わっているのか分からない隣人性の覚醒ほど孤独でしかも孤独から懸け離れたものはないように、媒体性の突然の発覚ほど自由でしかも自由から懸け離れたものはない。クライペ、この、唐突に闖入して来たヴルフェンスハウゼンの男(碧空754 )の、その、ふざけ切ったともいえなくはないユダヤの顔貌は思わす笑ってしまうか、さもなくばぐいと鼻をつまんで捻ってしまうとか、その発作はどうであれ、その民族性は最大級の拘束でありしかもどういうことなのかまるで「自由意志」みたいで、そうしたおかしな不随意性を代表するのが「不眠と頭痛と憂慮」あるいは「心臓と睡眠と消化」である。それは、鬱状態の苦悶から、自律的に(従って不随意に)空想の闖入を躁状態で生産する装置に次元昇格する。


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