碧空756 出来事の闖入(もう一つの受胎告知図)
756 出来事の闖入(もう一つの受胎告知図)
打ち消された「心臓と睡眠と消化」が映し出す透視不能のFと、Fが「心臓と睡眠と消化」を映し出す透視と、救出を待つ症状のFとの間に変態する存在は、暴かれなさと隠れなさと救出を待つ症状との間に変態するKの存在に対応していて、錠前は解錠したから開くのではなく「自由意志」で(解錠するよりも迅く、しかし解錠したから開くというように)開く。そうした正体の知れない目と目が眠り込むのを同時に模写する発作があくびであるが、そのあくびが「髪に手を突っ込む」Fに感染するのはあくびを共にするのである。(「日記」1914年7月、F.Kafka)
つまり、FとKの間にもちあがった婚約破棄は、破棄したから婚約解消というのではなく出来事の「自由意志」、それは、「私」を解放しようとする「超自然的現象」(正体の知れない目)にして、受胎告知のように闖入する。数多の受胎告知図には髪に手を突っ込んであくびをかくマリアがいてもよさそうなものなのだが。「するとついに、私によってあれほどさまざまに揺さぶられたこの部屋が、私のまちがいでなければこのときようやく自分を動かし始めた。変化は、薄く漆喰の化粧塗りが施されている天井のへりから始まった。漆喰の小片がはがれ、まるで偶然そうしているかのように床へ落ちてきて」(従って意図されているかのように)あちこちではっきりした音をたて、手を差しだすと(それに応じるようにして)そのなかにも落ちて来る。「そして天井の向こう側で、天井をぶち抜いて入ってこようとするものが空に漂っている」のが輪郭のかたちで分かる。「一日中ぼくに向かって飛んでくる」天使だが、しかし「私」が解けるためなのである。


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