Friday, July 01, 2016

碧空798 「身に覚えのない」呼吸

798 「身に覚えのない」呼吸  「生命が停止し、不気味になった」(Tolstoi )、つまりこれは、生命が、自律的な(従って不随意な)ものが、何よりも身近だが何よりも疎々しい大地や内臓のように剥き出しになって薄気味悪く迫る覚醒なのである。  こうした大航海時代的危機(覚醒)が老年になって、Thomas AquinasやTolstoi を襲う。堅固そうに鎧っていた「私」というものが解けて、「身に覚えのない」呼吸が闖入して肺も心臓も疑わしく、胸が潰れるように息ができない。この「身に覚えのない」terra incognita の闖入は、無や神の発見(の頓挫)のようなもので、この、まるで発見したことにならない混乱のしるしは、卒倒するような、上方へ落下するような、胸が潰れるような(息のできない)模写発作である。それだけでなく、告白の妥当要求である誠実の基盤がそもそも擬態であるし、「私」というものは生命に不随意に間に合わされているに過ぎないことに狼狽して(この「誰と入れ替わっているのか分からない」しかも「身に覚えのない」復活の気配に混乱して)発作的にまるで顔を右に左に回すように死に転移してしまう。死の恐怖、死を恐れることを恐れる、どう言おうと頭を掻いているに過ぎない。  復活の気配は、terra incognita の闖入であるが、奇妙なことにここからTolstoi は意図して神に出ようとするような狼狽振り、混乱振りなのである。まるで、不随意の闖入が気に入らないというふうだ。

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