Saturday, August 20, 2016

碧空831 1812年の大彗星/恐慌

831 1812年の大彗星/恐慌  ピエールが耳にしている心臓の音、自律した(従って不随意な)鼓動、伽藍が蔽うような(しかも伽藍が打つ)もう一つの心臓の音は、何のためにという問を消失させる系統発生的な呼び声であり、1811年と1812年が解離し切らないようにして再発し、「LITTLE NURSE」は、その図式である。  ナターシャが落とす「見てはならない」影は、透視不能と透視の間に鼓動し、この呼び声の犠牲は、「誰も見ていないが、隠れない」というより「隠れない(逃げ場がない)のに、誰も見ていない」のであれば、恐慌である。ナターシャの姿をして震える犠牲を、ピエールは兵士の顔にも顕れているのを目撃するが、それは個の関心を超えた厳粛、その「見てはならない」影が恐慌なのである。(碧空830)  「ウラー!」を叫ぶ群衆や兵士の高揚と感激は、個と種も、部分と全体も、手段と目的も解離し切らないで、単なる和ではなく自乗の殺到であるために恐慌の興奮と酷似しているが、致命的に懸け離れている。果敢に犠牲であることへ駆り立てられて「誰も見ていないが、隠れない」厳粛が人知れず落としている「見てはならない」影が、「隠れない(逃げ場がない)のに、誰も見ていない」恐慌なのである。

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