碧空883 こっそり窺う気配、部屋が映ってしまう気配
883 こっそり窺う気配、部屋が映ってしまう気配
部分の振りをする個虫の寄生の再発が、伝聞の再発、「伽藍」の「LITTLE NURSE」状態に形式を与える。それが、偏在するようにしてしかも遍在するようにして物語る窃視の大気である。
全体は霊的で部分の振りをして顕れ(従って)顕れない。伝聞の再発する「伽藍」は南部深奥から管を通されて響くが、その、名前が入れ替わる姿は「閉ざされた扉越しに耳を欹て、薄暗い廊下に身を潜めてこっそり窺う」というふうなのだ。
それは、「出埃及」に倣って失踪した叔母が深刻に祟り返しているMiss Coldfield(Rosa)の姿に留まらない。清教徒の輪郭をサトペンの、蒸気機関車(apparition-like suddenness)のような「再登場」におかされた姉Ellen の残骸、輪郭を探し索めて贅肉となって彷徨う肥満(それは、娘ジューディスの胸や腹や太ももの、寄生体のように力を潜めてふくらみ出そうとしている張りでは決してなく)そうした実体のない肥満や外延的付加物を鳴らし光らせ彷徨う虚飾にも転移しているし、サトペンと何か魂を売るような取引をしたMr.Coldfieldが南部や清教徒の叫びに耳を塞ぐというより個虫の寄生を十字に釘づけするように屋根裏部屋に閉じ籠って(あるいは屋根裏部屋になって)輪郭喪失をなんとかしようとするような発作にも症状は転移している。Coldfield 一族の誰もが「鏡を前にして、部屋が映ってしまう」のである。
この二つの姿は、奴隷状態を発作的に模写する二つの解である。「出埃及」の身振りと効果は、別の奴隷状態へ出てしまうスリップである。一体、こっそり窺う気配や部屋が映ってしまう気配は、寄生体なのか宿主なのか、見極め難い。(「Absalom,Absalom」)


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