碧空884 躱せない被凌辱の記憶、混血の記憶
884 躱せない被凌辱の記憶、混血の記憶
カッサンドラの予言が誰にも信じられないようにしたアポロンの本懐は、神殿で小アイアスを操ってカッサンドラを凌辱することであるが、カッサンドラがその凌辱の光景を予見できなかったはずはなく、その予見の成就(per-form-ance) はそもそも予言の能力というものが被凌辱的であるために、その「見てはならない影」を躱せないのである。カッサンドラの予言は誰にも容れられないが、それは、アポロンが小アイアスとなって器官を延長した二重凌辱の前戯のようなものである。
同じようにして、Miss Coldfieldの叔母の、馬の仲買人との駆け落ちとなって顕れた失踪は、清教徒の根底に熱っぽく疼く被誘拐と「出埃及」の(拉致されたがっている系統発生的な被凌辱と蛇のような脱皮の)、その躱せない記憶と形式の、その成就(per-form-ance) である。蒸気機関車のようにジエファソンに闖入して来たサトペンと何か取引した清教徒Mr.Coldfieldが娘Ellen を差し出す蒼古の情景は、運命と取引する被凌辱と脱皮のエネルギーの、その成就(per-form-ance) である。
同じようにして、エレンが、その子供よりも年下の妹ローザに奇怪な暗示をかけて子供たちを庇護しなければならないように差し出す蒼古の情景は、その庇護がまるで清教徒の純血を守るとでもいうかのようにして混血を守護してしまう。このようにして、個虫が部分の振りをする無性生殖の葛藤は、有性生殖にスリップすると混血が純血の振りをして解離しても混血の記憶を躱せない。
エレンが(そして息子ヘンリーもそうであるが)蒸気機関車のようにサトペン荘園に闖入して来たチャールズ・ボンにむさぼるように期待したものは、行方知れずになった清教徒の輪郭を探し索める贅肉や外延的付加物としての(屋敷の装飾品やアクセサリーとしての)ニューオリンズから来た若者の気である。この南部鼠蹊部の都会の活力は混血であり、清教徒を輪郭づけるものは「見てはならない影」としての混血だからである。混血は、清教徒の(実は有性生殖の)躱せない記憶なのである。
ヘンリーのボンに対する異様な心酔状態は、Coldfield 一族の清教徒性の、その本能的な記憶と形式の氾濫で、女を淑女と売女と牝の三階級に分けるように純血と混血が解離するのではないから、この心酔状態は実は清教徒ヘンリーを脅かす。(「Absalom,Absalom」)


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