碧空891 過度のズーム・アップ、エラー
891 過度のズーム・アップ、エラー
実はジューディスの腹違いの兄であることが後で発覚するチャールズ・ボンの登場は、何か双子のトリックのように節約じみている。その出現の思いがけなさは漠として予期されていたことを白状しているようなものであるが、極端に私的で跡形もない具体はなしで済ませ得るのであって、救済が襲うかのようだからである。しかし、トマス・サトペンには、コンナコトニナルナンテ 因縁の間道を通り抜けて来たというのではないにしても、この潜在的な近親相姦のズーム・アップはズーム・アップし過ぎて虚像になったかのような何かエラーじみているのである。
ニューオリンズの混血の闇にトマス・サトペンが映し出した顔が(壁に写る影が)部屋ではなく、チャールズ・ボンであることの思いがけなさは違法ではないが、トマス・サトペンの圏外から入り込んで来たかのようにして血脈に潜伏していたことの発覚は技術上のエラーなのである。しかもこの発覚は因縁じみて、間道を蛇のように通り抜けて来たかに見える。
しかしこれは、思いがけない解が尋常ではないために違法であるかのような、特殊であるために不正であるかのような変わり種であるからではなく、次元スリップするイロニーの精である。こうしたエラーをトマス・サトペンが気に病むとは言わないまでもエラーの正体を気にするとすれば、それこそは正に解離の技術の衰え、疲労、エラーなのである。(「Absalom,Absalom」)


0 Comments:
Post a Comment
<< Home