Saturday, November 19, 2016

碧空892 究極の推理の「壁に写る影」

892 究極の推理の「壁に写る影」  放熱器も冷え込んでしまった寒い部屋で(誰が話しているのか分からない「伽藍」で)痩身のクェンティンと肥満気味のシュリーヴとが白い息を洩らしながら(南部鼠蹊部から深々と管を通されて)蜃気楼のようなトマス・サトペンの家系に何が起こったのかを交々推理するのは、この世のものの媒体であることが言葉に転位して伝聞と告白が混血するようなものである。  伝聞と告白の、その妥当要求が如何わしいままに(というのも、伝聞の「壁に写る影」は告白、その告白の「壁に写る影」は伝聞であるためにスリップして)変態したのが対話法的な推理、その「壁に写る影」は神託である。これは個虫が部分の振りをするようなものであるが、言葉の対話法的な機能からすれば、解離の技術の(スリップを寸止めにする技術の)エラーということになる。 トマス・サトペンの家系に一体何が起こったのかを推理するのが双子のトリックを解くミステリであるとすれば、mysteriumは誰と入れ替わったのか分からない物語からの不思議な生還である。ミステリとmysteriumの間に「伽藍」は振動している。(「Absalom,Absalom」)

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