碧空973 究極の商品、究極の証言、究極の事件
973 究極の商品、究極の証言、究極の事件
V.K.ラットリフの目撃証言が、ジェファソンを写真撮影するような歴史化(全背景が前景の振りをする単純化の気配)というよりは密かなparaphraseの気配であるのは、ミシンのセールスマンとしてラットリフが極通俗に一般化された商品を誰か個に特別に宛てられたかのように届けるようなものである。究極の商品は、本当の持ち主に届けられ、究極の証言は、本当の話し主に届けられる。
究極の試煉が秘密であるように、究極の商品、究極の証言も秘密、沈黙で、ユーラの母体性と受胎が津波や大竜巻のような遮るもののない自然現象に見えるとすれば、それは、遠近法を媒質としてこの、ユーラと呼ばれる究極の事件の秘密と沈黙がまるで器官を延長するように敷衍されているのである。
祖先が傭兵として新大陸に渡って来てから四世代をかけてヨクナパトーファ郡まで流れた来たV.K.ラットリフが、その足取りを尋ねて東部へ遡上してもウラジミール・キリリッチに繋がる痕跡などはかすり傷やささくれほどもなく、しかし跡形もなくそう見えるのは、四世代をかけて平均化され保護色を纏って環境に融け込んだV.K.ラットリフこそは尋ね当てるべき痕跡、しかも全背景が前景の振りをするような痕跡だからである。このような、極身近な足跡に靴を重ね合わせてみたら疎々しい運命に追いついたとでもいうような究極の事件が、V.K.ラットリフの目撃証言を本当の話し主にしか届かないようにする。(スノープス三部作 W.Faulkner)


0 Comments:
Post a Comment
<< Home