碧空978 いつまでも事件にならない
978 いつまでも事件にならない
「永劫の土埃」が、瘢痕や傷痕に過ぎないジェファソンの「乾燥の九月」(W.Faulkner)の、空気も同然の土埃ぼこりの振りをして、土ぼこりも同然の、いつまでも事件にならない焦燥がうわさとなって漂う。ウィル・メイズがミニー・クーパーを凌辱したというのだ。
男をまるで知らないままに固く乾いていく独身の(奥行がないかのようにつづく)ミニー・クーパーは、洗礼派やメソジスト的なジェファソンの「壁に写る影」が不覚にも受肉した白人の女なのではなく、自殺の(奥行があるかのようにつづく)ユーラとは懸け離れた、しかしおぞましくも似ていて、ユーラが入れ替わったかのように壁に写した影の、余計な被強姦的な受肉なのである。
ウィル・メイズを狩ろうとするジョン・マクレンドンや他の元兵士たちは、何かに駆り立てられているようにというよりは何か迫り来るものから逃げるように黒ん坊のウィル・メイズに一塊になって殺到するが、その呼吸は自分のものではない。運命から逃れようとして運命に出てしまい、ハアハア息切れして膝に手を突き、あさましがるというふうなのだ。
ユーラの拳銃自殺は反ジェファソン的な独占(無性生殖的な包容力)を器官を延長して打ち消す究極のリンチだったが、ウィル・メイズのリンチは、というよりこのようなリンチは他の誰かの身体に顕れるのに公ケノモノにならない。極端に私的で、打ち消したのに何を打ち消したのかくっきり浮かび上がらない。いつまでも事件にならない焦燥がうわさや土ぼこりとなって遠近法を絞り込んでも、ピンぼけのままなのである。


0 Comments:
Post a Comment
<< Home