Wednesday, May 17, 2017

碧空1011 ヨクナパトーファの海賊匣

1011 ヨクナパトーファの海賊匣  ヨクナパトーファ郡役所の中枢は、ミシシッピ河流域に最短距離で(あるいは百年にひとたび)浮かび上がったかのような海賊匣で、髑髏と交叉した骨のしるしこそないが、ばかでかい鉄の鍵が付属していた。このばかげた鉄の鍵がジェファソンの町の偶然と間違いと冒険の思いがけない始まりである。  それは、もの凄い最短距離で行方知れずになる。たしかにスッと「地獄」に到達したとでもいうような漠とした不在の感触がして、しかしそれは、道端で金貨を拾う感触と区別がつかなく、この感触が交易官ラットクリフには単に15ドルの損失というのでははかり切れない漠とした埋め合わせ難さの気配に悩まされ、何か憂慮しないではいられない。それは何か献身に向かって物語らずにはいられないことのようにも思える。  一体、家族写真の「無意識」は、いつでも髑髏に覆る笑顔である。覆らないように必死の笑顔が暗示するのは、恐レテイルコトハ既ニ起コッテイル、この猖獗振りであるが、笑顔である限りそれは埋め合わせるように先へ踏み出す力になる。ジェファソンの発端の海賊匣が暗示するのもこの猖獗振りで、鎮めるように(献身が鎮めるのではなく献身を鎮めるように)物語らずにはいられなくて、そして、写っていないはずの鉄の鍵がちゃんと(もの凄い最短距離で)写っている、というふうだ。

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