碧空1026 自食的に若返る飛躍発作、症状
1026 自食的に若返る飛躍発作、症状
仮に、現在の広がりが(雌雄異体の気配が)何か幸福の約束のようなもので無垢の眺望に飛躍するというのであれば、それは正に深淵を跳躍する果敢な試みであるが、ヨハンの酷薄に見える憂愁は現在の広がりが不断に収縮する症状であり、雌雄同体であることの拡張がMonster の生長と感じられているのである。(「Monster 」浦山直樹)
しかし一体どうして、雌雄異体でないことが、現在が閉じてしまうことが、雌雄同体の気配がのさばって来ることが、禍々しい排除や殺戮や破壊に飛躍するのだろうか。
この飛躍発作は、天馬の軽率なとまでは言わぬまでも真摯なまでに信じ過ぎていた延命の医術の、現在が閉じてしまわないようにする飛躍の試みに不随意に対抗していて、思いがけなくも先祖返りした影の飛躍となって自食的に若返ってしまったのである。
仮に、この半ば予期していたはずの自食的な若返りが恐るべき(従って)来たるべき、既に猛威が迫りつつある、いや既に猖獗しつつある悪禍であるというのであれば、目を背けて逃亡するか立ちはだかって阻止するか選ばなくてはならない。この押し迫った局面で、天馬に選択しないという不正義の症状、発疹や微熱といった症状は顕れていない。
一体の飛躍、深淵を渡るような根拠のない飛躍が、もう一体の根拠のない影の飛躍を奇形嚢腫的に(部分が全体を孕んで)若返ったかに見え、天馬はヨハンに父呼ばわりさえされて催眠術にかかったかのようであるだけでなく、天馬が鎧っているはずの現在の広がりは急速に収縮しつつあって(ウミウシの殻のように世界が体内に沈み込んで)まるでヨハンを覆う憂愁が感染したかのようだ。
どちらも、瓦解しつつある遠近法のなかで今にも閉じつつある現在を押し広げようとして踏ん張っているかに見えるが、ヨハンを探すアンナや天馬や、その天馬や元凶や二重性のトリックを探るルンゲ刑事やジャーナリストと名乗る男が、違う手掛かり違う方向から同じ場所に出てしまうかに見える、その、陰謀じみた擬似瞬間移動は、遠近法が閉じてしまいつつあって覆いかける憂愁が事実を扱えないということなのである。


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