Friday, June 16, 2017

碧空1030 自署のようなもの

1030 自署のようなもの  輪郭を喪失して蝙蝠でもあれば狼でも、蝿でもあれば嵐でもあって鏡に面して部屋が映ってしまうDracula の、その自署のようなものに対応するのが、ヨハンが各地で養父母に寄生したことの最後の仕上げのようにして中年の夫婦を抹殺することである。(「Monster」浦沢直樹)  それは、自食的に若返るヒステリアを、寄生し尽くすヨハンと呼ばれる気配で想起しているかに見える。それは、持ち主のいない名前ヨハンが名前ヨハンの持ち主を探す、というような憂愁である。事実を扱えない憂愁が事実を扱おうとするように抵抗する、というふうだが、ヨハンが面する鏡には居場所を見失ったデュッセルドルフやハイデルベルクやハッティンゲンが映ってしまうのである。  それは、絶対悪というのではなく、擬似生殖と擬似精神の生殖の起原の呼吸、絶対の気配と呼びかけたくなる。

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