碧空1032 擬似過去
1032 擬似過去
遠近法のなかで、法則的に浮かび上がるに過ぎない「私」に齧りつき、歴史的に浮かび上がるに過ぎない代表に縋りつく習性をヨハンはあざ笑うが、自らをあざ笑うのである。孤独の極で、他の誰かとなって想起する献身が覚醒し、隠れなくなるのであるが、それは遠近法のなかで、特別に選ばれたと見えてしまう。自嘲は特権的な葛藤なのである。ヨハンは、写真には写らない月光姫のように流されていて、この、流されるということは他の誰かとなって想起する献身であるが、その、個を探して爆発的に広がる現在の気配と遠心分離した現在の気配の間に振れてしまい、遠近法に包まれて慢性的に死を遠避けようとする習性を(何か恐れるようにして)あざ笑うのである。それが、否定の習性となって(月光姫のように難題そのものとなって)ヨハンを律する。
それは、習性が不随意に解ける献身の覚醒、時間がかかるのではなく場所がかかる瞬間移動、持ち主を探す運命といった本能の気配が、過去の振りをするのである。月光姫の地上が難題であるのは、過去形の日常だからである。


0 Comments:
Post a Comment
<< Home