碧空1079 水の催眠術、スフィンクスの催眠術
1079 水の催眠術、スフィンクスの催眠術
「午後の時間は、しだいに過ぎて行った。黒人たちは出払っていて、屋敷の中は、ナーシッサの声と十五分おきに鳴る時計の音のほかに、なんの物音もなかった・・・
午後は、しだいに過ぎて行き、夕暮れが迫ろうとしていた。ナーシッサは、もの思いにふけりながら、じっと動かず、静かに坐ったまま、木の葉をそよがす風ひとつない、窓の外を見つめていた。それはまるで、次に何をしたらよいのか、誰かが教えてくれるのを待っているかのようだった・・・時間というものをゆっくり流れる暗い流れとしてか考えられなくなっていて、その流れを覗き込んでいるうちに、水の催眠術が働いて、不思議にも水そのものが消えてなくなる・・・」(「Sartoris」W.Faulkner)
覆いかけるように沈み込むのは暗騒音である。マルデ、次ニ何ヲシタライイノカ、誰カガ教エテクレルノヲ待ッテイル、というような半陰陽の、雌雄異体の間が決壊したノイズのような薄明の眠気のような憂愁である。マルデ、次ニ何ヲシタライイノカ、誰カガ教エテクレルノヲ待ッテイル、というようにスフィンクスは謎掛けたのであり、眠気がかかったのであり、本体なく流れるスフィンクスを覗き込んでいるうちに不思議にもスフィンクスそのものが消えてなくなる。スフィンクスの催眠術は、スフィンクスの気配が擬似脱皮する被催眠術状態なのである。


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