碧空1091 MOON WALK9(憤怒の如く懴悔の如く卒倒)
1091 MOON WALK9(憤怒の如く懴悔の如く卒倒)
1「家には物音が満ちみちていた。不明瞭な、はるかなその物音は、まるで眠っていた家そのものが、暗闇によって目をさましたかのように、目ざめとよみがえりの気配を秘めて聞こえてくる」
2「何か思いおこさせるようで、しかも耳なれぬ、すぐ近くのようで、しかもはるかな」アウラのような「都会の音が聞こえていた。それは脅威を意味すると同時に約束をも意味する」まるで「郷愁のような約束」を秘めた物音だった。(「Sanctuary」W.Faulkner)
この、寄せては退くどちらのノイズも、テンプルが監禁されていたメンフィスの女郎屋の媒質であり、種の夢としての雌雄異体の気配が世界の振りをしているのであるが、狼狽から、献身としての媒体性が器官の延長としての媒体性に不随意に転移して、すなわち侏儒も同然の不能のポパイがレッドの身体に器官を延長して(言葉となって)話すようにしてテンプルを蹂躙するが、奇怪にも(というより不覚にも)憤怒が後悔に変質してしまっていて、すなわち種の夢に献身することであるはずなのにまるで懴悔することであるように発作的に転移してしまっていて、重なる狼狽から、レッドの姿をした告白がなんと馬の嘶きになってポパイの口から飛び出してしまう。秘密の卒倒である。
こうした秘密の失神は、テンプルにも起っている。この被狙撃・被凌辱状態の「私」は「私」ではないという不正や眠気や何か記憶違いのようなエラーに面して憤怒がまるで制御不能に懴悔じみてしまい、不覚にも冤罪が贖罪に変質してしまうことに狼狽して,真に迫るはずの告白や目撃証言が(まるで頭を掻くように)冤罪やリンチの生贄をつくるばかりか秘密を卒倒させてしまう偽証となってテンプルの口から飛び出してしまうのである。
この秘密の卒倒は、とり返しのつかなさが(とり返しのつかなさを、であるかのように)埋め合わせ、その、馬の嘶きと偽証が異様なのは憤怒の如く懴悔の如く両棲的だからである。


0 Comments:
Post a Comment
<< Home