碧空1099 MOON WALK17(ルーカス・ビーチャムの憂愁)
1099 MOON WALK17(ルーカス・ビーチャムの憂愁)
「顔は使い古された鞍のような色をし、目鼻だちは、人種的な意味でではなく、十世紀にもわたる砂漠の騎馬民族の継承者という意味で、シリア人のようだった。それは、彼ら二人の祖父キャロザーズ・マッキャスリンの顔ではさらさらなかった。それは、二人のすぐ前の世代の顔――一万人もの、敗北を知らぬ南部連邦軍兵士たちの顔をつきまぜた、ほとんどそれと見分けもつかぬほどに戯画的な、落ちついて冷たく、彼の顔よりも無慈悲で、彼の顔よりもいっそう底光を帯びた、鉄板写真のような顔であった。」(「The Fire and The Hearth」W.Faulkner)
「六十七歳の今でも、四十三歳の自分の顔よりも実際に若く見え、自分の顔よりも激情や思惑や飽満や、挫折による荒廃のあとを示すことの少ないその顔――戯画としてでさえ彼の祖父マッキャスリンの顔の生き写しなどでは少しもなく、あの古い先祖の世代とその考えをすっかり受けつぎ、今や完全な、ぎょっとするばかりの忠実さをもってそれを再現しているその顔――老アイザック・マッキャスリンが四十五年前のあの朝見たのと同じように、防腐剤をほどこされてかすかにミイラになったみたいな、猛々しく敗れることを知らぬ若い南部連邦軍兵士たちの一世代全体を一つに凝縮したようなその顔――」
地理や気候や生理などの全背景がルーカスの顔面の振りをする、と同時に南部に生まれ出た顔という顔の意味深さとなって、Jesus Christのように他の誰に入れ替わったのか分からなくなる、というより他の誰と入れ替わっていたのか分からない、誰よりも生き延び、それよりも生き延びるundead状態で、OLD BEN の足跡が世界の消尽する寸前で一歩底なし沼から踏み出しているように、「神の小さな土地」(E.Caldwell)は、自分の顔を(他の何かに写して)探すかのように埋め金を探すルーカスがまだ掘っていない場所に移動してしまう。
それは、OLD BEN がレーテの河を渡る足跡の変奏であり、レーテの河を渡る献身のとり返しのつかなさそのものが埋め合わせる、といった突然変異の変奏である。


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