碧空1141 MOON WALK59(秘密の履歴改竄)
1141 MOON WALK59(秘密の履歴改竄)
邪悪な気配を媒質にして、世代異体が雌雄異体に屈折しても、この擬似脱皮には既視の気配、時制の遠心分離が解けた擬似過去がかかっている。扇と小さな包みと大きな腹を抱えて歩く太陽のような女体は、個虫が部分の振りをする擬似脱皮を記憶していて、それが距離を(従って速度を)脱皮するかのように感じられ、この瞬間移動は距離の揮発であるはずなのに距離が実体じみる。つまり、嘘のようなのだ。
それは、この世のことというより、「Light in August」(W.Faulkner )を媒質とした秘密の履歴改竄である。
癩病の父と子供が巡礼の姿で日本列島の海岸線を辿る荒涼とした光景は、日本の輪郭や見放された孤独をなぞるのではなく、一足毎に海岸線が癩の顔のように崩れ去っていくのである。この輪郭喪失は、しばしば清張が持ち込む双子のトリックとしての秘密の履歴改竄にエコーしている。しかしこの、ミステリの双子のトリックとしての(遠近法に包まれた)履歴改竄は、魂も同然の、殆ど1(しかし)いつまでも1にならない(遠近法の解けた)履歴改竄とは何かまるで違う。


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