Thursday, February 15, 2018

碧空1193 MOON WALK111(自ら自らを追い越す症状)

1193 MOON WALK111(自ら自らを追い越す症状)  自ら自らの祖先になる究極の混合種や、他の誰かとなって想起する献身の、その症状は、「何も身に覚えがないのに追われている!」や「いつの間にかもう一人増えている!」、「眠っている間に運び去られる!」といったPanic であるが、ラスコーリニコフ(「罪と罰」Dostoyevsky )には、自ら自らを追い越すような症状として顕れる。戞々と階段を登り詰めていく間に自ら自らを追い越して公然と(しかし、思いがけなく)映し出された鏡像が虫螻蛄も同然の老婆の姿をしていて、その(どこか闇の底で予期されていた)鏡像を打ち消すように老女の死体が横たわっても、それはPanic を埋め合わせたのでも鎮めたのでもなく、自ら自らを追い越す症状が客観に転写されて見えるに過ぎない。  この、自ら自らを追い越す症状は、「酔いどれ草の仲買人」(J.Barth )の遠近法のなかでは、メリーランドをめぐって誰が誰に身分や名前や顔貌や身形を変えて迫って来るのか分からないチェスタートンばりの眩暈を誘うような変装と陰謀の気配だけでなく、桂冠詩人エベニーザー・クックの、自ら自らを凌辱する純潔である。個を超える(と同時に)個の出現であるマリアの受胎は、マリアの身体に顕れたために世の女体が度忘れしていられるPanic であるが、エベニーザーの純潔は、双子の妹アンナの身体にそのPanic の症状が顕れないように双子の兄の身体に移して妊娠しそうになる。この、個を超える(と同時に)個の出現であるPanic は、現在の広がりが純粋に雌雄異体の気配であるような海上で発覚する。新大陸アメリカで肉を鬻ぐために女体、そして女体が虫のように集いて乗り込んだ女郎船が、絶海で海賊船に番われ凌辱されまくる(折しも夕陽を浴びて、この世のものとも思えぬ)光景は全背景を代表していて、個の出現は罰せられている。そして、全女体を代表して磔も同然の女体にエベニーザーが鬱勃として個を凌辱しようとするのは個を超えるのであるが、それは、純潔が童貞受胎に仮装するPanic なのである。

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