Thursday, April 12, 2018

碧空1230 MOON WALK148(魂の底知れない遁走、追い詰められた光景)

1230 MOON WALK148(魂の底知れない遁走、追い詰められた光景)  一体、その探鉱地帯のまぼろしじみたボタ山と、夜空にうなりを上げて白熱を吐き出す溶鉱炉と、青白い背景に浮かび上がるいくつもの巻揚機の迫り上がる全容と騒音に操られるように人影があちこちで体をかつ曲げかつ捩り、力を絞る、のたうつ追い詰められた光景が地獄じみているから「恐怖の谷」(「The Valley of Fear」C.Doyle)なのではない。  そこでは、うっかり何かを考えただけでもまるで考えたのは自分ではなかったかのように筒抜けになってしまう。谷全体が盗聴と盗撮と密告の監視機械のようなもので、密室の囁きも悪く拡声され、エコーして自由にならない。町全体が何か凶悪で威嚇的なのに幻影も同然の固定観念に支配され、その日常は何か訂正し難く意味深い。従って、何か日常の現実とはまるで違う。主体が二重に身を潜めて客観に転写されるのは変わらないが、主体の偏在振りが私的なのではなく、極端に私的に遍在して主体がおかされてしまうのである。それは、誰か(主観)の目を通して(器官を延長して)客観に転写されたその誰かの顔を(従って鏡像を)のぞき込むカメラ効果の、主体を宙吊りにしたスリルに酷似している。  このスリルは、双子のトリックになって、恐怖の谷に於いては殺人組織の壊滅を狙う者が組織の一員に成りすまして追い詰められている振りをする潜入捜査、復讐を躱そうと英国に落ち延びては忍び寄って来た刺客の死体に成りすまして死んだ振りをする、そのようにして自ら自らを追跡する魂の遁走は水のようにアメーバのように姿、形を変える。

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