碧空1248 MOON WALK166(黒いSherlock Holmes)
1248 MOON WALK166(黒いSherlock Holmes)
Freud の関心の重心は個と種の間に出現する法則的なもの、Sherlock Holmes の関心の重心は部分と全体の間に出現する歴史的なものである。
とはいえ、全背景が前面の振りをする限りで症状も歴史的であって、しかも葛藤を映し出す症状が、霊的葛藤(症状に身を潜める意味)の、その擬似本能的命令に矛盾しない範囲でずれる(別の組織へ転移するのではなく、症状そのものが転移する)仮面である一方で、歴史の表面であれ地下であれ遺された痕跡に身を潜める意味は、写真や鏡像が全体を代表するように予定調和的な過去であるが、それは痕跡を通して予定調和的な(従って、いつまでも暴かれない)過去に迫ろうとしていきなり虚像のように時制が拡張した擬似過去になる。予定調和的な全体がいつの間にか運命じみるのは、いつの間にかのぞき穴が盗まれているからである。
この、犯罪の予定調和的な全背景である(得体の知れない)運命が、天網のように張り巡らされた組織に転写され、ロンドン市に空気のように遍在していながら誰もそれとは感じない陰謀の気配、剥き出しになると内臓のように薄気味悪く迫る存在、というように焦点を絞って拡大し過ぎたかのように(まるで、結論を急ぐかのように)唐突にSherlock Holmes の眼前に姿を現わした「モリアーティ教授」は虚像じみているが、それは、Sherlock Holmes が半ば知らぬ間に、知るよりも早く鏡像の振りをしてSherlock Holmes を監視している黒いSherlock Holmes を告白しているのである。
変装を解くために変装するOLD NICKは「究極の問」であるが、この(Jekyll氏を脱け出すHyde氏のように)躍り出た黒いSherlock Holmes は「The Final Problem 」として客観に転写され、追い詰められたのか(それとも)誘うようにして追い詰めたのか判然としないラインバッハの瀑布の断崖で入れ替わるように蒸発、失跡するための、更にはまた、その滝壺の深い淵から擬似復活するための双子のトリックに加担することになる。これは、Sherlock Holmes を双子にしようという根深い誘惑や試みである。


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