碧空1263 MOON WALK181(クレメンスの失踪、献身のトリック)
1263 MOON WALK181(クレメンスの失踪、献身のトリック)
クレメンス失踪事件(「悪魔の見習い修道士」E.Peters)では、クレメンスの死体を兄が隠そうとしているのを目撃した弟がてっきり兄のしわざだと思い込んでしまったように、兄に代わって弟が死体を片づけようとしているのを目撃した父は次男のしわざだとあっさり信じてしまい、背景も症状も異なる目撃と誤解がつがい形成のように呼び合って、重なる。死体を隠すために、弟が兄に身代わり、父が息子に身代わるのぞき穴の再発は、いくら重ねられても根拠に突き当たらない。というのも、究極ののぞき穴の潜伏は客観に転写されることを躱して底なしだからである。
誤る危険を冒す目撃ののぞき穴にまるで神慮が乗り移ったように双子のトリックが二重に形成されて、クレメンスの失踪が解明し難いものになる。その後の兄の、弟も父も知らない策謀を隠す沈黙は弟を犠牲にする弟殺しも同然であるが、世界の終わりが現在となって寄せては返す地表に(あるいは修道院に)監禁され隠れないのはカインの末裔ではなく弟であるのはどうしたことか。それは、兄を庇うつもりが図らずも兄が真犯人であるかのように冤罪を仕立ててしまう、その、思いがけないアイデアが半ば自らをあざむいている献身のトリックを漠として(それだけに何か疚しく)知っているからなのである。


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